世田谷区 池尻複合施設

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異なるスケールのまちなみを緩やかにまとめる

東京都の民活プロジェクト

東京都は都有地を民間に売却し、民間事業者のノウハウを活用して木造住宅密集地域の整備促進を図り、合わせて、老朽化した世田谷区の公益施設(保育園、児童館、地区会館)を更新して地域のまちづくりに貢献するという「世田谷区池尻二丁目都有地活用プロジェクト」を実施。2009年夏に事業プロポーザルが実施され、民間事業者として「住友商事・住商建物、東急建設、アール・アイ・エー」グループが選定されました。約9,500㎡の敷地のうちRIAは世田谷区の公共施設が入居する複合施設部分の設計を担当しました。

本プロジェクトのスキームは都から土地を購入し、民間で建設、さらに世田谷区に売却するというものでした。そのため、設計を進めるにあたって区の4施設の担当課や管理者を含め非常に多岐にわたる関係者との調整を慎重に行う必要があったのも、このプロジェクトの特徴となりました。

 

スケール感の異なる街並みが接する敷地

池尻界隈はもともと旧大山街道にそった街道筋であり、古くから「小区画のまちなみ」が続く地域。さらにその南側は、江戸時代は鷹場、戦前は旧陸軍練兵場という地歴をもつ大型街区となっており、計画地はスケールの異なる「まちなみ」の境目であるという特徴を有していました。設計時点では、その異なるスケールを緩やかに繋ぐことができないかということがデザイン上の課題でした。

池尻
計画地の北と南で大きく区画の大きさが違う。小さな区画の街区から見た建物が圧迫感のあるものにならないよう注意を要した。

そこで、用途や利用者の異なる4施設を上下に重ねた複合施設であることから、「情報満載のにぎやかな書棚」を外観デザインのコンセプトとし、ランダムなリズム感を持つパネルと開口部を表層に組み込むことに。これにより長さが強調されがちな「大きな区画のまちなみ」から、隣接する「小さな区画のまちなみ」へつながる景観の変化を緩やかなものにしています。

池尻複合施設
建物正面から見ると縦長のパネルが本の背表紙のように連なり表層に変化を与えている。
池尻複合施設
夜。内部での活動の様子が外部に漏れだし、地域に賑わいをもたらす。

 

複合施設としての課題「音」

異なる用途が上下に重なった複合施設であること、住宅に囲まれた立地であるという制約から、音への配慮は当初から大きな課題でした。施設内ではダンス、カラオケ、さらに中高生のバンド活動や電動工具を使用する工作室など大音量や振動が発生する活動が多く行われる一方、保育園の午睡室や貸し会議室など静粛性を求められる施設も多くあります。音の課題を解決するために、各課へのヒアリングに基づき発生音を想定し、建築各部位の仕様を設定。具体的には、空調の消音チャンバーや吸排気口の位置、ダンスやバンド活動を行う音楽室や工作室には湿式の浮床を採用するといったスペック面の対策はもとより、廊下を音の緩衝空間として各部屋の配置を工夫するなど、プラン上も様々な配慮を行なっています。

池尻複合施設
BOX in BOX型の遮音対策を施したバンド室
池尻複合施設
写真右手の工作室と廊下の間の壁を展示ケースとして遮音に配慮している。
池尻複合施設
各階平面図、異なる用途の4つの施設が積み重ねられている。

 

計画概要

発注者 住友商事
延床面積 4,776㎡
主要用途 保育所、児童館、地区会館、健康増進施設、交流施設
竣工年 2013年

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