県都の玄関口づくり
ハピリンはJR福井駅の西口に誕生した再開発ビルです。福井駅周辺では北陸新幹線開通にあわせて都市基盤の再整備が積極的に進められています。駅周辺の再整備を先導することとなった当事業では「県都の玄関口づくり」をスローガンに、観光、文化、情報発信、生活支援等の機能の集積が図られ、活力と魅力ある都市拠点の形成が目指されました。

変革期を迎えた中心市街地
戦災・震災復興の土地区画整理事業により形成された福井市中心市街地は、建物の多くが一斉に老朽化する状況にあり、都心部の再整備が課題となっていました。時代の流れの中、商業機能の衰退が進行する反面、北陸新幹線整備という新しい計画も進められつつありました。2002年には、再開発地区内の大型商業施設が閉店することを受けて、中心部の疲弊進行を心配する危機感から、県、市、地元権利者、経済界による委員会が設置され、再開発に向けた活動が本格化します。RIAはこの頃からコンサルタントとして、地域や自治体の方々の相談を受け、関係者の合意形成のお手伝いから関わり続けることになります。

事業計画の最適化 ~屋根付き広場整備計画の誕生~
地元の結束により2006年には市街地再開発事業の準備組合が設立されます。閉店した大型商業施設の権利については事業化のため地元企業が取得に乗り出しました。そして2007年には、施設用途としてホテルを含めた最大容積率による再開発事業の都市計画が決定されるまでに至ります。しかし、社会情勢の変化、経済状況の悪化により、ホテル誘致を断念せざるを得ない状況に陥ってしまいます。その後、関係者とともに、容積率の最大化を求めず、過度に大きな規模としない再開発へのシフトを模索し続けました。その結果、無理に床を整備することなく、再開発で生み出された土地を北陸の気候を考慮した屋根付きの広場として行政が取得する案にたどり着きます。2011年に、この再構築案が新たな都市計画として決定され、ようやく事業が進展します。

交通結節点の形成
福井駅周辺では、北陸新幹線駅舎の整備、えちぜん鉄道の高架化及び新駅舎整備、福井鉄道延伸による交通広場への電停整備、バスターミナルの整備、タクシー・自家用車用プールの整備が実施され、交通結節点としての空間整備がなされました。北陸新幹線開業を見据えた交通機能の強化を目標に、一体性を持った計画が推進され、再開発ビル付属の屋根付き広場と西口交通広場の空間的な結節や、歩行者用シェルターの連続など、各施設間の補完による空間づくりが実現しました。

再開発ビルと屋根付き広場および西口交通広場の一体化を図るため福井駅西口全体で基本方針が定められ、各施設の設計に反映されている。各種公共交通機関乗降所の集約実施とあわせて、動線やコンセプトの統一を図り、交通結節点としての空間整備を実現している。
官民連携による都市機能集約
ハピリンは主に住宅(地元企業が取得・分譲)、商業(権利者で共有)、公益(福井市の施設)の機能で形成されています。官民それぞれの役割分担のなかでできる限りの施設整備を行い、地元の総力で都市機能集約を図り、事業を完成させました。

イベント空間「ハピテラス」の創出
ハピリンは特徴的な屋根付き広場「ハピテラス」を併設しています。ハピテラスは、大庇とトップライト、側面ガラスで囲まれた開放的な全天候型広場です。ハピテラスの設置者は市ですが、指定管理者制度を用いて管理運営しています。ハピテラスは、イベント空間として活用されるほか、平常時にはベンチや植栽を配置し、ビルや駅利用者の憩いの場として開放利用されています。
年表
2002年 | 福井駅西口中央地区開発基本構想の策定 |
2003年 | まちづくり協議会設立 |
2006年 | 準備組合の設立 |
2007年 | 都市計画決定 |
2011年 | 都市計画変更 |
2012年 | 再開発組合の設立 特定業務代行者の決定 |
2013年 | 権利変換計画認可 施設建築物工事着工 |
2016年 | 施設建築物工事竣工、グランドオープン 組合の解散 |
計画概要
事業名称 | 福井駅西口中央地区第一種市街地再開発事業 |
施行者 | 福井駅西口中央地区市街地再開発組合 |
施行面積 | 約0.7ha |
延床面積 | 約35,000㎡ |