瀬田の杜Garden & Terrace

  • マンション
  • 関東・甲信
  • 2020年代

まちづくりに貢献したいという施主の想い

まちづくりに貢献したいという施主の想い

本計画は施主の「地域に貢献するようなまちづくりを行いたい」という想いから始まりました。
敷地は施主が40年にわたりゴルフ打放練習場を運営していた場所で、それより以前は施主の本家として住まわれ、長きにわたり引き継がれてきた大切な土地でした。
そこで地域に愛されてきたゴルフ打放練習場ですが、一定の役目を終えたということで「違う形で地域の活性化に貢献するまちづくりを行いたいがどうしたらいいだろうか?」という相談から始まりました。

ゴルフ打放練習場のころの敷地

戸建て住宅が並ぶ閑静な街並みの中での、約1haの土地

敷地は道を隔てて3つに分かれており、合計すると約1haもある土地となります。
ゴルフ練習場であったときには、高いネットで覆われていたものの、ヒマラヤスギの列植によって外周を囲われており、いわば住宅地の中のボイドとして存在していました。
閑静な戸建て住宅が並ぶ街並みの中で、新しく建築をつくるにあたり、何をどうつくれば、地域に貢献できるまちづくりができるか?約1haという住宅地としては巨大な開発をいかに街並みに調和させ、かつ事業性も上げながら、まちづくりに寄与するかというのが課題となりました。

周辺の街並み
ゴルフ打放練習場のころの通り(左手)

 

なにを、つくるか?

「地域の活性化に貢献するまちづくりを行う」ことは決まっていましたが、具体的に何をつくるかというのを考えるところからスタートしました。
都市計画上の用途地域としては第一種低層住居専用地域となり、建築できる用途がかなり限定されています。住宅用途がベースになることは用途地域上、必然的に決まることになりましたが、まちづくりの視点からただ住宅を並べるだけのことは望まれてはいませんでした。
ヒントとなったのは、ゴルフ練習場のときに敷地角のエントランス脇にあったカフェです。ここはゴルフ練習場としての利用客以外にも開放されており、地域の方がふらりと立ち寄る場所になっていたということでした。
そこで第一種低層住居専用地域において建設可能な用途を洗い出し、住宅用途以外ではかつてのカフェがあった場所を中心として、店舗を持った住戸(店舗兼用住宅)、保育所、クリニックを設けることとなりました。
住宅用途としても、まちづくりに寄与し、地域の活性化を生むためには多様な世代を迎え入れる住まいが必要であると考え、共同住宅の単一用途ではなく、タウンハウス、SOHOの3つの住まいを設けることとなりました。

コンセプトダイヤグラム。杜の中に様々な用途が混在し、地域の拠点となることを目指して作成した。

どう、つくるか?

戸建て住宅が立ち並ぶ中での約1haの開発において、重要になったのは建物配置、ボリュームのつくり方です。ただでさえ広大な敷地であるため、そこに長大な建物ボリュームをつくると街並みにそぐわないのは明白でした。ただ、土地の規模や用途地域により導かれる事業採算性を考慮した最適解は共同住宅をいかに指定容積率すべて消化できるかということになります。これについては容積率をすべて消化した場合の建物ボリュームをシュミレーションしてみて、やはりまちづくりとして好ましくないということで施主と共通認識を持ちました。
結果的には事業成立性と街並みとしてのバランスの試行錯誤を何度も行った上で、指定容積率の7割程度の消化での計画となりました。
また、街並みへの調和のさせ方として、周辺のボリュームに合わせて分棟することで検討を進めました。敷地は道路を隔てて3つに分かれていましたが、それを9つの敷地に分割し、9棟の建物としています。さらに各棟を分節、雁行させた建物配置を行うことで戸建て住宅が連続するような街並みに調和する景観づくりを行っています。

容積率をすべて消化した案
最終的なボリューム及び用途構成。分棟、分節、雁行させ、かつタウンハウスは勾配屋根とし街並みに配慮している

 

施主と、事業者と、施工者とつくった新しいまちの姿

プロジェクトのスタートから4年半、施主、及び事業者と新しいまちの姿について議論を重ね、複雑な建築形態を施工者とともにつくり、竣工に至りました。
まちの骨格となる通りを「地域をつなぐストリート」と位置づけ、そこの始点となるゾーンは、店舗兼用住宅の小さな2つの店舗と、クリニックに囲まれ、地域の新しい顔として徐々に地域の賑わいの拠点になりつつあります。

地域をつなぐストリートの始点となる、にぎわい広場

地域をつなぐストリート

同終点となるゾーンは、近隣を幼稚園や小学校に囲まれ、コミュニティの拠点となるような広場として位置づけました。これから地域に寄り添った小さなまちの居場所として使われる予定です。

地域をつなぐストリートの終点、コミュニティ広場

地域をつなぐストリートには植栽の間にベンチも設置されている

周辺環境への配慮として十分に引きを取り、みどりの緩衝帯を設けた配置計画は、既存街並みへの調和とともに、新しい街並みとして明るく、広がりのある豊かさをつくり出しました。

共同住宅のファサード。大きくセットバックした建物配置は街並みと、共同住宅に対して豊かさを生んでいる

共同住宅のボリュームは雁行配置とし、地域の風を取り入れるよう配慮した

二子玉川ライズから始まった二子玉川地域でのまちづくり。本プロジェクトでは、駅前ではない、少し駅から離れた場所でのまちづくりとして、その地域の拠点となり、まちに新陳代謝を促し、活気を与えるまちづくりの方法を探りました。
RIAでは今後も二子玉川地域のまちづくりに関われるよう、継続して取り組んでいます。

 

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