自然、歴史を享受できる利便性の高い計画地
計画地は、昭和40年代以前の低層建築物や非耐火建築物が多数存在し、公園や緑が少なく、土地利活用が進展していないエリアでした。
一方、大門駅から浜松町駅、竹芝駅にアクセスの良い場所であり、その周辺では様々な大規模開発が進みエリア一帯がグローバルに進化を続けています。
更に計画地北側の汐留西地区では、すでに汐留シオサイトとして土地の利活用が成熟し、本地区もアジアヘッドクォーター特区と東京圏国家戦略特区に指定され、汐留西地区と整合性のある街づくり、質の高い都市型住宅、良質な都市空間を創り、複合市街地の形成を目指す地域と位置づけられていました。
また東側には、線路を挟んで浜離宮、北側にはイタリア街が隣接し、自然や潤い、歴史ある景観を享受できる場所でもあります。
そこで、賑わいや潤いのあるまちの形成を目指して2005年には共同建替え検討からスタート、間もなく再開発事業として検討を進めることとなりました。
浜離宮の至近立地の特性を活かした外観デザイン

デザインコンセプトは「浜離宮に舞い降りた丹頂鶴」。浜離宮恩賜庭園を望む立地特性を考慮し、かつて生息していたという丹頂鶴が飛翔する躍動感、水辺に降り立つ時の浮遊感を、丹頂鶴らしい白と黒を基調とした外観デザインとして表現しています。また、丹頂鶴が降り立つ葦の原をデザインモチーフに取り込むなど、「もう一つの浜離宮」の創出を目指しています。
中層部の住戸バルコニーは茶系の門型フレームを配して隣接するイタリア街の賑わいに呼応させ、事務所棟は角度により表情を変える縦ルーバーを配しています。
まちをつなぐ緑豊かな外構デザイン
イタリア街との一体感を出すためレンガ舗装材を採用しながら、浜離宮の石畳、石垣、堀といった要素を引用するなど、日本と西洋、歴史と未来、都市と自然などの「融合」を表現しました。敷地周囲は緑あふれる歩道状空地、お祭りの拠点となり防災機能も備えた広場状空地、1階のスーパーマーケットと合せて賑わう提供公園などで構成しています。
そのほか、歩道新設、電線類地中化、JR各線からも視認性の高い壁面緑化等、豊かな外構空間を実現しました。
心の拠り所、上質な住まいを表現した内装デザイン

浜離宮の魅力を「迎賓」「品格」「潤い」「静謐」といったキーワードに基づき、喧噪に包まれた都市空間から「住まい」としての寛ぎの空間へと緩やかに導く、心の拠り所となるような上質な住まいを追求しました。
共用室には浜離宮を一望できるラウンジ、浜離宮の「汐入の池」を模したゲストルーム、静謐なライブラリー、360度の眺望を楽しみ回遊できる空中庭園を計画しました。
多数の権利者への権利変換対応

従前、地区内には老朽化した2棟(計約160戸)のマンションが建っており、その多くが専有30㎡未満の狭小住戸でした。区分所有者の大多数が権利変換を希望されたため、従前マンションの階数・住戸方角に基づいた従後の住戸配置の提案により、比較的短期間で配置調整を行うことができました。
住宅・オフィス複合建築ならではの電気・熱融通システム
本件は国内初となる複合一体開発での中圧ガスコージェネレーションシステム(以下「CGS」)の導入を行いました。
住宅棟とオフィス棟の電力負荷を一括受電により一元化して各棟へ供給することで、中圧ガスCGSの住宅棟への導入と長時間・高稼働運転による購入電力を削減。
更に発電時に発生した廃熱を回収してオフィスの空調機と各住戸の潜熱回収型ガス給湯器で再利用し、CO2排出削減効果も得られました。
また、耐震性の高い中圧ガス導管は、発災時にも非常用発電機・CGSでの電力を必要箇所に供給可能な計画としています。
発起より順調に進行しながら、2011年の東日本大震災により中間免震構造への変更やオール電化からガスコージェネレーションシステムの導入等、方針を改めながら設計検討を重ね、2016年2月に施設建築物着工、2019本年2月に竣工を迎えました。
計画概要
発注者 | 浜松町一丁目地区市街地再開発組合 |
延床面積 | 65,716㎡ |
竣工年 | 2019年 |
主要用途 | 共同住宅(約560戸)、事務所、銀行、店舗、保育所 |
デザイン協力 | 外観:佐藤尚巳建築研究所 外構:塙ランドスケープデザイン 共用部:フューチャリティ 照明:リウスライティングオフィス |
受賞 | 2020年グッドデザイン賞 |
年表
2005年 | 総合設計制度による取組み開始 |
2007年 | 市街地再開発事業へ移行 基本計画 スタート |
2008年 | 準備組合立ち上げ |
2010年 | 基本設計 スタート |
2011年 | 都市計画決定 東日本大震災(免震構造に変更、CGSの導入) |
2012年 | 市街地再開発組合設立 |
2013年 | 実施設計 スタート |
2014年 | 権利変換計画認可 |
2015年 | 解体工事 着手 |
2016年 | 新築工事 着工 |
2019年 | 竣工引渡し |