2024年3月、北陸新幹線の福井延伸と同時に一部先行開業を迎えた“FUKUMACHI BLOCK”。
県都の玄関口である福井駅前に聳える地上28階建のこの建物は宿泊・オフィス・商業・居住・駐車など多種多用途の複合体であり、多くの地元関係者とわれわれ業務代行チームの協働によって、都市計画決定からわずか5年で開業を迎えました。
福井初の外資系ホテル(COURTYARD BY MARRIOTT)と本格的フードホール(MINIE)、またインキュベーション施設(越乃バレー)や音・食を楽しめる屋内広場(ULO)といったユニークな機能を内包し、一般向け住宅とアクティブシニア向け住宅がロビー等を共用する分譲住宅(ザ・福井タワー)等も備えた“FUKUMACHI BLOCK”は、新幹線の開業で新時代に入った福井の一大拠点として、中心市街地の都市再生をリードする存在となっています。

事業概要
事業施行者 | 福井駅前電車通り北地区A街区市街地再開発組合 |
施行地区 | 福井市中央1丁目 約1.3ヘクタール |
施設規模 | 敷地面積 約6,949㎡、延床面積 約71,208㎡、容積率 約750% |
特定業務 代行者等 |
(総合企画) 森ビル都市企画株式会社 (設計・監理・事業コンサルタント) 株式会社アール・アイ・エー (工事施工) 株式会社竹中工務店、村中建設株式会社、株式会社長谷工コーポレーション (住宅保留床取得) 株式会社長谷工不動産、阪急阪神不動産株式会社、株式会社マリモ、株式会社コスモスイニシア |

事業経緯
平成29(2017)年8月 | 駅前電車通り北地区市街地再開発準備組合の設立 |
平成30(2018)年10月 | 都市再生緊急整備地域の政令指定(福井駅周辺地域) |
平成31(2019)年3月 | 都市計画決定(市街地再開発事業・都市再生特別地区・地区計画) |
令和元(2019)年7月 | 特定業務代行者等「12 PRIMERS」の選定 |
令和元(2019)年12月 | 市街地再開発組合の設立 |
令和2(2020)年8月 | 権利変換計画認可 |
令和2(2020)年10月 | 解体工事着工 |
令和3(2021)年10月 | 本体工事着工 |
令和6(2024)年3月 | 一部先行開業 |
令和6(2024)年5月 | 工事完了公告 |
総合力を活かした推進体制
新幹線開業に合わせたタイトなスケジュール管理と組合収支の安定化を実現するため、総合企画・設計監理・事業コンサル・工事施工・保留床取得といった各役割を担う企業がチームを組み、再開発組合の事業をトータルに支援する体制を構築しています。
さらに、地元有力企業の参加組合員としての参画や、地元銀行による資金面・人員面での支援、デザインや運営への地域プレイヤーの関与など、多方面にわたる「地域の力」を結集。
加えて、県と市が一体となった強力な事業支援を背景に、地域と外部専門力が一体となった推進体制を整えています。
多様な手法の組み合わせ
特 区 :北陸初指定の都市再生緊急整備地域において、都市再生特別地区による容積割増
街 区 統 合:既存市道の廃止で実現した大街区化による必要ボリュームの適正配置
歩 行 者 空 間:地区計画の地区施設等による多様な空間の確保とほこみち制度による運営
補 助 制 度:防災省エネまちづくり緊急促進事業(政策支援型+地域活性化型)の導入
仮使用手続き:工事中建物の先行使用と暫定管理体制の構築による、一部先行開業の実現
デザインコンセプトと各デザイン
Nature friendly minimalism
-人と自然の共存そして自然環境に配慮したミニマルなデザイン―
上記のコンセプトに合わせて、下記の三つの方針でデザインしました。
1. デザイン要素を最小化し、統一した世界観を持たせます
福井らしさを表現する”羽二重織”の形や質感をデザインモチーフとして建物全体に統一感を持たせます。
「質実剛健」な福井らしさを表現するためデザイン要素を絞り、飾りすぎないミニマルでスタイリッシュな外観を形成します。
2.素材のあたたかみと親しみやすさを表現します
ヒューマンスケールとなる低層部は石材等質感のある自然素材を採用して親しみのあるデザインとします。
電車通り、中央通り、屋外広場(COCO)は歩道部分と舗装材を合わせて空間に拡がりを与えるとともに、連続性を持たせることで施設内に入りやすいデザインとします。それぞれが樹木やベンチをはじめ個性のある場所としてデザインし、親しみのある景観を形成します。
3.仕合せ部分(用途間の接続部分)で景観にリズムをつくりだします
多様な用途の複合体が特徴の建築の仕合せ部分(用途間の接続部分)をボリュームの切り替えで分節し景観にリズムと個性を与えます。

高層部の外観デザイン
低層部の外観デザイン
1F部分の外壁は笏谷石とし、2,3階の外壁は笏谷石色のタイル張りとしています。ランダムに凹凸をつけて壁面に陰影とリズムを与えます。
住宅棟の外観デザイン
福井の名産“羽二重織”を表現する
住宅バルコニー(低層)は乳白フィルムを用いて、羽二重織の滑らかな質感を表現しました。高層は福井の景観が室内からよく見えるよう透明度の高いフィルムを使用しています。
街区を超えたまちづくり

本計画の東側には、弊社設計の「ハピリン」が位置し、駅前ロータリーに面した大屋根付きの屋外広場を備えています。対する本計画建物には、交差点を隔てて屋内広場を配置。異なる機能をもつ二つの広場が呼応し、賑わいを生み出すことで、街区を越えた人々の交流を促し、まち全体に新たな活力をもたらす計画としています。