森本 芽衣(2020年入社)

  • 意匠設計

実力と実行力があれば可能性はどこまでも開かれている。
そんな「組織」

Profile

森本 芽衣(もりもと めい) 意匠設計

2020年入社。東京本社にて、至誠学舎改築基本設計(福祉施設)、世田谷区立瀬田小学校基本設計を担当。2年目より名古屋支社に異動し、福井駅前南通り再開発、静岡御幸町・伝馬町再開発、その他企画段階のプロジェクト等に関わっている。食欲と好奇心旺盛。

 

組織は個人でできている

「組織」というと、ある軸となる思想のもとに人々が集まっている、そんなイメージを持ちます。ですが組織という実体はなく、そこには人がいるだけです。人がいて、思想が寄り集まって、「組織」になっている。人数が増えると前者の組織像に寄りそうですが、後者の(ある意味原初的な)組織の在り方は、RIAの核であるような気がします。面接の際、留学していたヨーロッパでの仕事にも興味があった私は、そのような海外の仕事があるか質問しました。「ないですが、自分で持ってくるのならやって下さい。」今となってはとてもRIAらしい返答をいただいたように思います。すべてがあるわけではないけれど、実力と実行力があれば可能性はどこまでも開かれている。そんな「組織」だと思っています。

プロポーザル検討中の様子。若手にとって、短期間で設計のプロセスを一巡するよい学びの機会です。

 

まちづくりの中で設計を担当する意義

福井駅前南通りの基本設計を行っているとき、ふと怖くなりました。3街区を含み、合計約6,000㎡の敷地を設計することは、良くも悪くもこの街を大きく変え得る。その責任の重さに気が付きました。この計画をまちにとって「良いインパクト」にするにはどうしたらよいか?再開発は集団で建て替えを行う手法ですが、それぞれの建物を単独で建て替える場合との最大の違いは、共用空間の存在だと思います。集団での建て替えにより、初めて ”my” だけではない、”our” spaceが生まれる。ここで建築はまちのスケールに近づきます。ひとりが他のコミュニティメンバーを想い、コミュニティは訪れる外の人のことを想う。敷地とまちの接点である共用空間を豊かにすることに、力を尽くしたいと思うようになりました。
現在は再開発、内装、企画、と規模もフェーズも様々なプロジェクトを担当しており、それぞれ違う頭を使うのでおもしろいですが、「敷地とまちの接点をどう作るか」ということは共通して重要なテーマだと思います。責任の重さに怯む気持ちから、まちづくりの中で設計をする意義を改めて考えることができてよかったです。

まちを歩いていて、敷地とまちのグッドな接点を見つけると嬉しい。大きな開口部と内外一体のベンチがすきです。

 

かたちで「解く」ことのおもしろさ

日々、大人になるにつれてわからないことが増えるなんておかしい…と思いながら生きています。おそらく、唯一解のない問いと向き合うことが多くなったからです。大学院の課題で、社会問題は大抵 ”wicked problem”(様々な要素が複雑に絡み合っている問題)だと読みました。よく建築の世界で、ふさわしいかたちを導くことを、空間を「解く(とく)」と表現します。私はこの言い方がすきです。複雑な問題に○や×で答えを出すことは難しい。でも、○や×ではない解答を与えられる可能性が、かたちにはあるような気がする。そのことが面白くて、わかるほどにわからない建築がすきです。仕事の中でも、コンセプトがかたちになっていくところが難しく、そしておもしろいと感じています。建築をみるときも、コンセプト(思想)と、それを表すかたち(エンジニアリング)の関係を意識するようになって、より面白くなりました。

歩く、見る、食べる、調べる、が出かけるときのルーティン。

建築はすべてに通じている

大学受験時、私は宇宙物理学を志していました。高校で聴いた村山斉さんの講演がおもしろく、以来重力の研究に憧れていました。ですが学科決めの際、やたら人気の建築分野が気になって、先生に建築の面白さを訊いたところ、「建築は建物をデザインしているだけではなくて、そこで過ごす人々の生活をデザインしている」と。宇宙よりもっと近い空間を深く知ること、そして誰かの大切な空間をつくることに関与できるとしたら、もしかして宇宙よりおもしろいかもしれない…。そうして入った建築の世界でしたが、空間や空気感に惹かれていた私は建築作品にも建築家にも建築史にも詳しくなく、学生時代はコンプレックスに思っていました。ですが、色々なところに出かけ、好奇心を追求することは、設計者・利用者どちらの視点も養うことにつながります。社会には、生活をデザインする建築に無関係な事柄の方が少ない。どんな体験も引き出しになるはずです。だから誰よりもまちを楽しみ、建築を使い倒す気持ちで、社会人になった今も休日は真剣に遊んでいます。もっと建築を知りたくなった今は勉強の日々ですが、ひとりに、まちに、時代に、文化に応える空間を実現する建築をつくるために、今後も分野を問わない好奇心を大切にしたいです。

建築に限らず、何かを見に行ったときの資料などはほぼすべて保存しています。(拾った石なども…)