岡 慎太郎(2007年入社)

  • 意匠設計

図面の線にのしかかる責任は大きく、それだけ感動も大きい

Profile

岡 慎太郎(おか しんたろう) 意匠設計

2007年入社。名古屋支社に配属文化施設や福祉施設、教育施設担当として店舗、共同住宅から成る複合施設「太田川駅西再開発事業」では、主に劇場の意匠設計を手がけた。現在は東京支社に異動となり、足立区の小学校の設計に取り組んでいる。

 

大規模な組織でありながらも、柔軟で自由なところが魅力

私がこの仕事に就いたのは、小学生のときアントニオ・ガウディの本を読んだことに端を発しています。「これほど社会に求められる、創造的な仕事があるのか!」と大きな衝撃を受け、建築家を目指そうと思ったのです。のちにガウディの作品を見に行ったときは、まるで成長してできた自然の一部であるかのような建築を体感し、それまで以上に建築に対する思いが強くなりました。

大人になり、就職するにあたってRIAを志望したのは、駅前の再開発の実績がたくさんあり、まちへの貢献が可能だと思ったからです。私の出身地である山梨県は、ほかの地方都市と同様にまちの中心部の空洞化が顕著で、駅前のにぎわいを取り戻すことやコンパクトシティの実現などが、いまの社会には急務だと感じていました。その点、RIAでは都市の再生や活性化に関わるチャンスが多く、目標を実現できるのではないかと考え、入社を決めました。

会社に入ってみて驚いたのは、予想していた以上に自由に仕事をさせてもらえたことです。働き始める前は、RIAは大規模な設計事務所のため堅実で、アトリエ系の事務所と比べると設計内容や進め方などが堅く、自由が少ないイメージがありました。しかし実際は逆で、設計のやり方は多種多様ですし、対応も臨機応変です。いまではむしろ、柔軟で何でもありという印象を持っています。

 

専門家の力を結集させれば、困難な状況も切り抜けられる

そんな風土の会社でさまざまなプロジェクトに携わってきたなかでも、「太田川駅西再開発」の仕事はたいへん勉強になったと感じています。劇場の設計を行うにあたり、駅周辺のにぎわいを生む「核」となる施設として、駅前の空間とのつながりや、人をどう呼び込むかということに注力しました。また、ワークショップを通じて施主や多くの施設利用者と接することにより、「みんなのための建築」をつくることの難しさも学べたと思います。

同様に、多くのことを吸収できたと感じるのが、会社に入って初めて現場監理を任されたときです。経験のないことにたくさんぶつかりながらも、工事現場は生き物のように作業が進んでいき、次々と判断を迫られます。そんな状況にあっては、周りにい各分野の専門家などに話を聞いて情報を集め、それを吟味したうえで判断をくだすよう心がけました。私ひとりの力だけではどうにもならなくとも、設備や構造、外構など、多様な分野の人の能力を結集させれば解決できることも少なくありません。

東海市芸術劇場
「太田川駅西再開発(ユウナル東海)」のなかに併設されている東海市芸術劇場。1,000席を超える大ホールを持つ本格的な劇場

 

自転車での散策&観察は、趣味と実益を兼ねた最高のリフレッシュ

これは趣味にもつながっているのですが、設計の仕事に携わるうえで非常に役立つと思うのが、自転車でまちや自然のなかをあちこち走り、出くわした建築を観察することです。運動不足の解消になるうえ、目や肌で自然を感じることが精神的なリフレッシュにもなります。しかも自転車は土地の高低差を体感しやすいので、敷地を読み取る道具としても有用だと言えそうです。

設計の仕事は、場面場面で良いアイデアやディテールを繰り出すことが求められます。それには、日ごろからたくさんの建築を見て、自分の引き出しのなかにストックを溜めておくことが大切。会社に入ってからも海外に旅することはできますが、長期の休みを取りやすい学生さんには、お金がなくてもいろいろな都市に出かけて、多くの建築を見ておくことをお勧めします。

岡慎太郎
自然のなかを自転車で走ると、心も身体もリフレッシュする

 

作図には覚悟がいる反面、完成したときの感動も大きい

この会社で働き始めて10年が過ぎましたが、いまだに、リアルな建築をつくるというのは非常に大変なことだと感じます。図面に描く一本一本の線におのずと責任がのしかかり、作図する際には精神的な「覚悟」のようなものを持たずにはいられません。学生のときに行っていた作図とはまったく別ものだと思います。

それだけに、実際に建築が完成したときの喜びもひとしおです。描いた線や絵が形になることにこそ、設計の仕事の醍醐味があると思います。自分が描いた立面図の窓の大きさや位置、全体のプロポーションなどが、現実のまちのなかに1/1のスケールで成り立つ。初めてそのさまを見たときの興奮と感動は、いまでも忘れられません。

図面の線一本一本にも想いを込める
図面の線一本一本にも想いを込める