倉敷にふさわしい都市景観の形成
倉敷市阿知3丁目東地区は、倉敷市中心市街地活性化基本計画の「中心拠点区域」に位置し、倉敷市の広域拠点のみならず、高梁川流域圏の広域拠点として、都市機能集積を誘引し、さらなる賑わいを創出する市街地の形成を目指すとともに、「滞在快適性等向上区域」として公共空地などを活用した取り組みにより、官民と一体となった居心地の良いまちなか創出を目指しています。
当地区は、再開発の施行により、①倉敷市の広域拠点の玄関口にふさわしい風格ある景観形成に寄与する都市デザイン、②倉敷美観地区からの景観に配慮した建物デザイン、③居心地の良いまちなかの創出を図る官民連携によるオープンスペースの整備を行い、土地の高度利用、都市機能の集積及び都市景観の形成を実現しました。
景観計画の高さ制限をきっかけに身の丈再開発へ
2010年、倉敷市は景観計画を施行し、美観地区からの眺望を重要視して再開発による建物の高さを31mまでとすることになりました。これにより、それまで検討していた超高層の計画を大きく見直すことになりました。
再開発の仕組みは、開発規模が大きければ大きいほど有利な事業採算となりますが、地方都市の需要を超える規模の開発は空室リスクとなります。当地区では、元々、床需要が低かったことに加え、高さ制限が加わったことにより、多用途の組み合わせで容積を消化していく計画から方針を転換し、まちのポテンシャルを最大限に生かす身の丈再開発の実現を追求することになりました。
具体的には、①公共空間を拡張してオープンスペースを豊かな共用空間とし、②この公共空間に接する形で店舗はすべて路面型で配置、③用途別の分棟化によって有効率を高めつつ、④雁行配置により生まれた空地で「まちの余白」を計画しました。
倉敷のまちに馴染む都市デザイン
当地区のデザインコンセプトは、「まちつむぐ、倉敷阿知」です。再開発によって、「まち・地域・生活・時間・緑」の5つの要素でまちをつむいでいくことを設計方針としています。
外観デザインは、倉敷中央通り、旧一番街商店街の特徴を捉え、周辺の建物のスケールに馴染ませていくこと、和と洋が織りなす倉敷の建築表現を取り入れること、そして、北館と南館のそれぞれのファサードに共通のデザインコードを用いて一体的な景観にまとめています。
公共空地は、再開発の中心となる居心地の良いオープンスペースであるとともに、再開発と周辺のまちをつなぐ媒体となるように、ベンチや植栽を分散配置し、ヒューマンスケールとなる居場所を数多く作りました。また、公共空地の中央に位置する芝生広場は、再開発の敷地と一体的に整備し、都市再生推進法人の活用などの官民連携による使い方の制度設計を行い、官民の境界線が分からない魅力的な空間となっています。
まちづくりの波及効果
当地区は、再開発の完成に合わせて、まちづくり協議会が発足し、芝生広場を中心に様々なイベントが行われ、賑わいの風景が広がっています。また、当地区の再開発は、商店街に面していたため、再開発によって商店街の片側だけが更新されるのではなく、周辺のまち全体が一体となって魅力を高めていくことが重要です。実際に、事業の進捗に併せて既存の商店街のリニューアルやリノベーションが実施され、商店街が徐々に変化しています。
当地区の再開発がきっかけとなって、倉敷のまちづくりの動きがより一層発展していくことに期待しています。
計画概要
事業名称 | 倉敷市阿知3丁目東地区第一種市街地再開発事業 |
施行者 | 倉敷市阿知3丁目東地区市街地再開発組合 |
施行面積 | 約1.7ha |
延床面積 | 北館 約10,800㎡、南館 約29,200㎡ |
年表TIMELINE
年代 | できごと |
---|---|
2002年 | 準備組合設立 |
2007年 | 都市計画決定 |
2017年 | 都市計画(変更)決定 |
2018年 | 再開発組合の設立 |
2019年 | 権利変換計画認可、施設建築物工事着手 |
2021年 | 施設建築物工事竣工、グランドオープン |