Cen Terrace(千日町1・4番街区再開発)

  • 九州・沖縄
  • 2020年代

天文館の再生プロジェクト ~場所の特性を読み解き、想いを繋ぐ~

センテラス天文館は、南九州随一の繁華街である天文館地区のほぼ中心部にあり、広く市民に親しまれてきた百貨店を中心とした2つの街区を一体的に整備する再生プロジェクトです。当事業は、市街地再開発事業の手法を用いて、平成25年の研究会設立を契機に検討がスタートしました。
天文館地区は、昼夜、老若男女が集う、多様なニーズが混在する地区であり、これを最大の魅力として捕らえ、広場・商業(飲食、物販、サービス等)・図書館・ホール・オフィス・ホテル・展望フロアなど多種多様な用途を備えた複合施設として、様々な目的の人々が集まり、賑わう施設を目指しました。

天文館地区における施設全景

地域を繋ぐ多彩なパブリックスペース

施設と地域、そして地域のコミュニティをつなぐ重要な場所と考える1階の広場(センテラススクエア)は、設計初期の段階からワークショップ等を通じて地元商店街の方々や学生達と議論を重ね、ソフトやハード面に関するアイデアを募り、地元の想いを繋いだ、魅力的な場所となることを目指しました。
また、多目的ホールや屋上庭園、展望フロア・レストラン等のパブリック空間を中心に、交流が生まれ、「鹿児島らしさ」「居心地が良い場所」というテーマのもとに創り上げた環境により、様々な人の動きが生まれることが期待されています。

広場のデザインは「天文館」という場所性を意識した。広場の床は御影石を大島紬・薩摩織のイメージでパターン貼り、天井は薩摩切子をモチーフにした多角形の金属パネルで構成し、天井の照明は天体・星空をイメージし、光の照度や色が変化するようプログラムしている。施設を訪れる人々や街に対して、時間の経過とともに変化する施設の表情をつくっている。

まちの賑わいと回遊性を承継

 電車通りに設置されていた古いアーケードは、本計画にて歩道上に約6.5mの片持ち構造の庇を設ける新たな形でのアーケードとして再生し、屋根付きの歩道空間として、バスを待つ人々のスペースとして機能しています。また、100m以上ある街区の長さに対し、庇の高さを変え、通りや歩行者空間にリズムと賑わいを提供しています。
また、2つの街区を通り抜ける市道を廃道し、都市計画で定めた通路として、従前の人の流れを敷地内に確保するなど、かつての賑わいと回遊性を承継しています。

アーケードは、薩摩切子をイメージした照明環境により、天文館の街に新しい賑わいを もたらすことを意図した。

敷地内の貫通通路は広場とも連続し、回遊性を確保している。

官民連携による一体的な商空間の形成

 本施設の4、5階に配置した鹿児島市立図書館(天文館図書館)は、低層階の商業施設からの連続性を重視し、官民の境界なく、デザインの統一を図っています。また、隣接するカフェ等とは、視覚的にも動線的にも境界が感じられない、一体的で開放的な空間を創出しています。また、施設内のトイレは、地元の地権者の方とも議論を重ね、設計段階から一緒につくり上げました。

図書館のフロアをつなぐ大階段は本を読むスペースでもあり、イベント時の観覧席に もなる

隣接するカフェと連携し、飲み物の持ち込みや本の持ち出しを可能としている。 境界を無くすことで、お互いの利用者が自由に行き交う雰囲気づくりを実現。

特に女性トイレについて、利用動線や視覚的な演出も工夫を凝らし、各フロアでインテリアのテーマを変えるなど商業施設らしい華やかなで居心地の良い空間を目指した。

自由度の高い共有床と施設の一体運営

 当事業では、大半の床を「共有」での所有としており、地元地権者の出資で設立した㈱千日1・4開発がこれらの運営を担うことで、計画当初からの理念であった「施設の一体的な管理運営」が実現しています。また、所有と運営を分離することは、将来的にも自由度の高い運営を可能としています。

計画概要

事業名称 千日町1・4番街区市街地再開発事業
名事業者 千日町1・4番街区市街地再開発組合
敷地面積 6,086㎡
延床面積 36,645㎡

 

 

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