中心市街地のにぎわいを活性化する交流空間
商業施設の郊外化により、空き床となっていた駅前再開発ビル「ラピオ」の一部を改修し、小牧市の子育ち・子育ての拠点となる「こまきこども未来館」を整備しました。既存機能(児童館)の移転・拡充にとどまることなく、小牧駅前という立地環境を活かし、新図書館や駅前広場との連携により、中心市街地に世代を越えた人々の交流が生まれる場所を創出しています。RIAは基本構想の段階から関わり、単なる施設の入れ替えではなく、駅前の積層した「空き地」が多様な活動が生まれる「広場」になることを目指して計画・設計を進めました。
■他施設とつながり連携する賑わい拠点 |
■小牧駅前の再開発ビル「ラピオ」 |
無機質な商業空間を「明るく開放的な広場」に転換
20 年以上前に建設された既存の商業施設は、天井が低く、柱が均等に並ぶ「無機質な空間」で構成されていました。改修にあたり「➀緑を感じられる公園のような場所」「②カラフルな⾊彩に彩られた空間」「③吹き抜け・天井⾼さの確保による開放性」をテーマとし、こどもたちがわくわくするような居心地の良い空間づくりを⽬指しました。
【改修前】窓のない閉鎖的で無機質な商業空間 |
【施工中】天井や床の仕上材を撤去 |
【施工中】吹抜となる部分のコンクリート床スラブを撤去 |
【改修後】明るく開放的な児遊ひろば
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【改修後】3層吹抜の空間に新設したシンボルツリーとネット遊具 |
なお今回の改修では、建物内の他施設を営業しながらの「居ながら改修」であると同時に、再開発ビル・区分所有建物特有の用途区分や所有区分、管理区分などの状況を十分に把握し、理解した上で、他の区分に影響を及ぼさない改修計画が求められました。RIAの培ってきた再開発事業(新築)での経験と技術が、ここ(改修)でも生かされています。
小牧の「自然」をテーマにした3つのフロア
3つのフロアを対象年齢(幼児・小学生・中学生~)でエリア分けし、年齢に合わせた多様な遊び・学びのコンテンツを整備することで、安全・安心に遊べる場としています。そしてその3つのフロアを施設の象徴となるシンボルツリーを配した吹抜空間でつないでいます。建物内の他施設との間はできるだけ壁で仕切らずに、室内緑化のプランターによる緩やかな境界としています。こどもの連れ去り防止などセキュリティに配慮しつつも、建物の色々な場所からこどもの活動が感じられる活気ある施設づくりとするためです。
2階:こまきの森 中高生を対象とした多様な活動の場 |
4階:こまきの虹 幼児を対象とした安全に遊べるスペース |
3階:こまきの空 小学生を対象としたあそび・学びの場 |
こども未来館と他施設との境界は「緑」で緩やかに仕切られる |
森・空・虹 3つのフロアをつなぐ「シンボルツリー」
既存のコンクリート床を撤去して、3つのフロアがつながる吹抜空間を新設しています。吹抜空間には「シンボルツリー」と名付けたネット遊具をメインとした⼤型遊具を設置し、こどもたちが思う存分に体を動かせる遊び場を創出しています。フロアをつなぐカラフルな階段や、吹抜を横断するブリッジ、バリアフリーのためのエレベーターなど、みんなが利⽤する動線空間と⼤型遊具が重層し、こどもたちの活動のエネルギーを感じられる施設の核となっています。
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市民ワークショップから生まれた遊び・学びのコンテンツ
基本構想の段階から、中⾼⽣や保護者とのワークショップを複数回開催し、こども未来館で⾏われる具体的な活動について議論を深めてきました。議論の中でニーズの⾼かったコンテンツを抽出、その活動に必要なスペースを検討し、3つのフロアに配置しています。
保護者ワークショップ |
中高生ワークショップ |
特に人気の高かった体を動かす遊具のメインコンテンツ「ネット遊具」では、登り、滑り、転がりと子どもたちは遊び方を考え、挑戦することを楽しんでいます。また、外から活動が見えるようガラス張りとした「体験広場」では、ダンボールで実物大の車を作るなどの自由な創作活動ができる他、タブレットによる作曲体験、自分で作るドローンコースなど、学校や家庭では体験できない活動ばかりで、利用者から「子の夢中な姿が嬉しい」「何度来ても飽きない」との声を多くいただいています。
創作活動ができる体験広場 |
こどもを見守りながらゆっくり過ごせるくつろぎスペース |
自然の温かみを感じられる木製のアスレチック |
地元の大学と連携し制作されたデジタルコンテンツ |
計画概要
発注者 | 愛知県小牧市 |
改修面積 | 6,305.70㎡(2~4階の各一部) 総床面積:48,785.14㎡(B2~5階) |
主要用途 | 児童福祉施設等 |
竣工年 | 2020年 |