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#リノベーション/コンバージョン

神奈川大学横浜キャンパス図書館
継承と刷新 -既存を活かした新旧デザインの調和-

神奈川大学とアール・アイ・エーのつながり

神奈川大学横浜キャンパス図書館は、1980 年に竣工したアール・アイ・エー設計の建物であり、築後40 年以上が経過し、設備の老朽化、湿度・換気不足による書籍等のカビ、漏水などの問題を抱えていました。そこで神奈川大学100周年にむけた将来構想の一環として、設備更新だけでなく内装も一新する「全面改修」が決定し、再び横浜図書館の改修設計の機会を得ました。

竣工当時の西立面

神奈川大学総合計画完了時の鳥瞰図

神奈川大学とアール・アイ・エーの歴史は1953年に当社創立者である山口文象が手掛けた「神奈川大学総合計画」から始まりました。キャンパス全体の配置計画に加え、旧本館、旧3号館、6号館(旧図書館)、体育館など、多くの校舎をデザインし、現在も半数近くがアール・アイ・エーの設計として建物が活用されています。中でも図書館は横浜キャンパスの中心に位置し、大学という学びの場で中枢機能を担うため、「学生が訪れやすく開かれた新しい図書館」として生まれ変わることを目指しました。

既存空間と素材を活かした改修デザイン

大学の年間スケジュールに合わせたリニューアルオープンを迎えるため、確認申請を伴わない範囲で設計を行うことが求められました。そのため、増築(床面積の増加)や大規模の修繕・模様替え(過半を超える主要構造部の変更)を避けた最小限の改修で、いかに一新させるかが課題となりました。限られた操作の中でより良い図書館へと生まれ変わるために、
「既存を活かす」ことに思考を凝らしました。

継承と刷新 -既存を活かした新旧デザインの調和-

茶色のタイルが目を引く外観全体はそのままに、1階の外壁を全面撤去し、東側一面をガラス開口とすることで、レンガタイルの趣きを残しながらも開放感のある外観を目指しました。
南側 2 階には建物の出入口を新設し、学生の動線に合わせて多方面からアクセスできるエントランスとしています。既設1 階の出入口については、既存の庇、柱を利用しながら新しいデザインに一新しています。

開放的な東側外観から外部へ灯りが漏れる様子

外観のレンガタイルが内部へ連続する部分は、タイル壁や床仕上げをそのまま残し、タイルの風合いと相性の良いモルタルや黒を基調としてデザインを調和しています。

既存建物の面影を残した1階エントランス

建物中心部では、既存のトップライトを撤去して吹抜けを2層から3層に拡張し、縦一面に連続するブックウォールには学位論文が配架されており、知の蓄積を感じるシンボリックな空間を作り出しています。

3層吹抜けとブックウォールが続くシンボリックな空間

建物構成についても既存の考え方を踏襲し、外に開かれた下層階は活発で賑わいのある空間、上階にいくほど静かで落ち着いた空間となるフロアゾーニングを目指しました。仕上や書架・什器は上階にいくほど濃色とし、最上階はあたたかみのある茶系を採用しました。照明についても色温度を階ごとに変化を持たせ、フロアごとに雰囲気の異なる内装としています。

1階は白色の書架と明るい色味の什器、色温度は4,000Kで活発な雰囲気

4階は茶系の内装と黒色の書架、色温度は3,000Kで落ち着いた雰囲気

 

時代のニーズに応じた学習空間

図書館機能としては、学生の多様な利用形態や学習スタイルに対応するため様々な学習空間を計画しています。1階はグループ学習やプレゼンテーション等の活発な議論を行う「ラーニングHive」を設けています。上層に行くほど落ち着いた空間とし、最上階には静かに熟考する個人ブースがある「サイレントルーム」を設置しました。学生が目的に応じて好きな場所を精選し、自発的な学修を行うことを目指しています。

1階ラーニングHiveの多様な閲覧席

 

計画概要

発注者 学校法人神奈川大学
(デザインアドバイス等) キャンパス計画専門チーム
建築学部教授 中井邦夫
構造規模 RC造 地上4階/地下2階
延べ床面積 7,876.58㎡(地下2階積層書庫含め9,693.21㎡)
竣工 2022年2月

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