図書館の再生と駅前にぎわいの再生
寝屋川市立中央図書館は、2018年に発生した大阪府北部地震で被災し閉館を余儀なくされた総合センターから、京阪本線寝屋川駅前の市が取得したビルの1フロアに移転し、2021年8月にリニューアルオープンしました。
同じく駅前の既存建物を活かして改修が計画されている駅前庁舎やこども専用図書館、生涯学習施設など、寝屋川市が進める駅前周辺整備の先駆けとなる、市民サービス向上と駅前のにぎわいの核となる新しいまちの拠点を目指しています。
リノベーションによる建物の再生
1985年に建設された既存の商業施設は、天井高さが低く、柱が均等に並ぶ無機質な空間で構成されていました。
老朽化した設備機器の更新や現行法への適用、既存ビルの用途変更に伴う荷重条件の検証など技術的な解決に加えて、ビル所有者や区分所有者との合意により、施設共用部分に対しても改修を加えています。
既存躯体を活かし既存施設の設備を再利用するなどコストを抑え、また設計開始から開館まで12か月と短い期間で、新しい価値を生む魅力的な空間を実現しました。
新たな価値を生む空間デザイン
改修にあたり「おとなの図書館」をテーマとして、市民ひとりひとりの「時間」「居場所」「思い出」をつくる場として、居心地のよい何度も訪れたくなる空間づくりを行いました。
落ち着いて読書や学習ができるパーソナル空間である「NEYA」を各所にちりばめ、それらをつなぐ寝屋川をイメージした「KAWA」を施設中央部に配置し、移動空間として各エリアをつないでいます。
思い思いの場所で時の移ろいを感じることができる図書館
閲覧スペースは落ち着いて読書や情報検索ができるパーソナル空間として、多様な形態で各所に計画しました。書架を掘り込んで設けた閲覧席や書架に囲まれた席、カウンター席など、書架の近くで気軽に図書を手に取って楽しめるよう座席を点在させています。
コロナ渦の開館ということもあり、極力向かい合う形の閲覧席を減らし、思い思いの場所で図書を楽しんでもらえるよう工夫を凝らしました。
直接外光が差込まない既存建物に、光膜天井で空間全体を包む優しい灯環境をつくり、本を探しやすいように書架自体を照らし、パーソナル空間は手元に必要な灯を届け、読書や学習に集中できる灯環境をつくりました。
陽だまりをイメージした光膜により照らされる活動的な昼の灯と、低い位置に置かれた灯に照らされるコントラストや陰影による心地よさに包まれた夜の灯、2つの灯の表情を持つ空間を創出しました。
国産木材で作られた書架と温かみのある色調の照明計画で図書と本を探す市民を優しく包む環境を創出し、市民が親しみを持ち、ゆっくり時間を過ごせる空間を実現しました。
計画概要
発注者 | 大阪府寝屋川市 |
改修面積 | 全体19,552㎡の内改修範囲2,184㎡ |
主要用途 | 図書館 |
改修完了 | 2021年 |